「北朝鮮帰国者」の記憶を記録する会編
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『証言・北朝鮮帰国者』の内容を分かりやすく紹介。1959年から行われた北朝鮮帰国事業とは
何だったのか。「地上の楽園」に渡った在日朝鮮人の生活、監視、飢饉、脱北までを50人の証言
から考えます。
1959年から1984年まで続いた「北朝鮮帰国事業」。
この事業によって、日本国籍を持つ約6,800人を含む9万3,340人が、日本から北朝鮮へ渡ったとさ
れています。
当時の北朝鮮は「地上の楽園」と宣伝され、新しい生活への希望を抱いて海を渡った人も少な
くありませんでした。
しかし、現地で待っていたのは、宣伝からは想像できない厳しい現実でした。
今回紹介する『証言・北朝鮮帰国者―祖国に渡った「在日」はどう生きたか』は、北朝鮮へ
渡った人々の生活と苦難を、脱北した帰国者50人の証言から記録した一冊です。
📖『証言・北朝鮮帰国者』とは?
書籍情報
書名:『証言・北朝鮮帰国者―祖国に渡った「在日」はどう生きたか』
編集:「北朝鮮帰国者」の記憶を記録する会
出版社:集英社
レーベル:集英社新書
ISBN:978-4-08-721412-5
本書の大きな特徴は、政治や外交の視点だけではなく、北朝鮮で暮らした一人ひとりの生活に
焦点を当てていることです。
労働、食事、住居、学校、結婚、地域社会など、普通の人々がどのような日常を送っていたのか
が、当事者の証言を通して伝えられます。
🚢北朝鮮帰国事業とは何だったのか
北朝鮮帰国事業は、1959年に始まり、約25年間にわたって実施されました。
「帰国」と呼ばれていますが、参加者の中には朝鮮半島北部にルーツを持たない人や、北朝鮮で
暮らした経験のない人もいました。また、日本人の妻や子どもなど、日本国籍を持つ人々も北朝
鮮へ渡っています。
当時は、北朝鮮で安定した仕事や住居、教育、医療を受けられるという宣伝が行われていました。
日本社会で差別や生活苦に直面していた在日朝鮮人にとって、それは新しい人生を始めるための
希望として映ったと考えられます。
🏠「地上の楽園」と現実の生活
北朝鮮へ到着した人々は、宣伝と現実の大きな違いに直面します。
本書では、帰国者たちが体験した次のような問題が語られています。
十分な食料や生活物資を得られない暮らし
厳しい労働環境
出身や家族関係による差別
自由な移動や発言に対する制限
住民同士の監視や密告
日本へ自由に戻れない現実
北朝鮮での生活は、単なる経済的な貧しさだけではありませんでした。
自分の考えを自由に話せず、誰を信用してよいのか分からない社会の中で、人々は家族を守りな
がら生き延びなければならなかったのです。
👥帰国者と現地住民の間にあった壁
日本から渡った人々は、北朝鮮社会の中で特別な立場に置かれました。
日本で身につけた服装や生活習慣、言葉などから「日本から来た人」と見られ、現地住民との
間に距離が生まれることもありました。
一方、日本から送られてくる現金や衣類、食料、電化製品などは、厳しい生活を支える重要な助
けとなりました。
こうした「在日マネー」は帰国者の生活を支えただけでなく、日本の文化や商品が北朝鮮へ流
入する一つの経路にもなったといいます。
⚠️監視・密告と政治犯収容所
本書では、北朝鮮社会における厳しい統制についても証言されています。
政府や指導者への批判は許されず、日常生活の中にも監視や密告が存在しました。本人の言
動だけでなく、家族や親族の経歴が生活や進学、就職に影響する場合もあったとされます。
さらに、政治犯収容所に送られた人の体験も収録されています。
そこで語られる飢え、強制労働、暴力などの証言は、国家による人権侵害の深刻さを伝えています。
🌾大飢饉から脱北へ
1990年代、北朝鮮は深刻な食料不足に陥りました。
国からの配給が滞り、多くの人々が自分で食料を探さなければ生きられない状況に追い込まれます。
帰国者たちも、市場で物を売る、親族からの援助を受ける、国境を越えて食料を探すなど、さま
ざまな方法で生き延びようとしました。
そして一部の人々は、命を懸けて北朝鮮を脱出します。
しかし、国境を越えれば安全になるわけではありません。拘束や強制送還の危険におびえなが
ら、第三国や韓国、日本などを目指す長い逃避行が始まったのです。
💡本書から考えさせられること
『証言・北朝鮮帰国者』が問いかけるのは、北朝鮮という国家の問題だけではありません。
なぜ多くの人が「地上の楽園」という宣伝を信じたのでしょうか。
そこには、日本社会に存在した在日朝鮮人への差別や貧困、将来への不安も関係していまし
た。また、帰国事業を推進・支援した組織や報道機関、日本政府を含む関係者の責任について
も考える必要があります。
歴史を振り返る際には、結果だけを見て「なぜ信じたのか」と当事者を責めるべきではありません。
当時、どのような情報が与えられ、どのような選択肢しかなかったのかを知ることが重要です。
📚こんな人におすすめ
本書は、次のような人におすすめです。
北朝鮮帰国事業の歴史を知りたい人
在日朝鮮人の戦後史に関心がある人
北朝鮮の一般市民の暮らしを知りたい人
国家による宣伝や情報統制について考えたい人
脱北者や政治犯収容所の証言を学びたい人
日本と朝鮮半島の近現代史を学びたい人
✍️まとめ|個人の証言から歴史を見る一冊
『証言・北朝鮮帰国者―祖国に渡った「在日」はどう生きたか』は、北朝鮮帰国事業を数字や
政治だけで説明するのではなく、その中で生きた人々の声を記録した本です。
希望を抱いて海を渡った人々は、北朝鮮で何を見て、どのように家族を守り、厳しい時代を生
き抜いたのでしょうか。
50人の証言から浮かび上がるのは、歴史の大きな流れに翻弄されながらも、必死に生きようと
した一人ひとりの姿です。
過去の出来事を忘れず、国家の宣伝や情報をどう受け止めるべきかを考えるうえでも、貴重な記
録といえるでしょう。
※本記事は書籍の紹介情報をもとに構成しています。証言の詳しい内容や歴史的背景について
は、ぜひ本書でご確認ください。

